南アW杯で注目「ブブゼラ」 爆音が勝敗分かつ?

東京新聞 2010年6月15日


 日本中が注目した14日のサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の日本―カメルーン戦。絶叫するアナウンサーの声の背後で、爆音のように鳴り続けたのが、地元サポーターが吹き鳴らす民族楽器「ブブゼラ」だった。あまりの騒々しさに大会主催者側は使用禁止も検討中。実際のところプレーに与える影響はあるのだろうか。(秦淳哉)

ガード下を上回る音量

専門家「集中力乱れる」「対策は慣れ」

 ブブゼラは長さが1メートルもあるラッパの一種。赤や緑のカラフルなプラスチック製だが、かつては牛の角で作ったといわれる。独特な重低書は強烈だ。スタジアム内での音量は130デシベルに上るとされ、電車のガード下に相当する100デシベルを上回る。試合を中継したテレビ局のアナウンサーも、隣の解説者の声が「放送用ヘッドホンを通じてしか聞こえない」と悲鳴をあげたほどだった。
 ヨーロツパやアジアの選手たちからも「ビッチでコミュニケーションが取れない」と批判が続出、とうとう大会の責任者は13日、ブブゼラの使用禁止を検討することを明らかにした。
 日本のスタジアムでも鳴り物の使用は制限が多い。社団法人「日本プロサッカーリーグ」(Jリーグ) の広報担当者は「各クラブごとにスタジアムのルールを定めていて内容は微妙に異なるが、近隣住民から苦情が予想される鳴り物はどこも使用できないだろう」。
 実際に、かつて日本のサッカーに不可欠だったチアホーンと呼ばれる小さなラッパは、1993年のJリーグ開幕後、使用禁止となった。
 メンタル面への影響も無視できない。順天堂大の中島宣行教授(スポーツ心理学)は「聴覚と運動は関係ないと思われるかもしれないが、有力なテニスプレーヤーでも耳栓をした状態では、まともなストロークができなくなる。それだけ選手にとっては聴覚が大切で、聞き慣れない大音量だと集中力も乱れてパフオーマンスが落ちる」と語る。
 一方で国際大会では選手にタフさが求められるのも事実。中島教授は「日本人が心地よいと感じるスズムシなどの秋の虫の書も、外国人らには雑音にしか間こえない。国民性の違いだろうが、ブブゼラ対策には練習中から同じ音を聞くなど慣れるしかない」と提言する。

日本で人気完売の店も

 ところが、ここに来て日本国内では、そのブブゼラ人気が高まっている。 東京のアフリカ雑貨専門店「マサイマーケット」(世田谷区北沢)はW杯用応援グッズとして南アから輸入。今月8日に入荷し、1本3980円で販売したが、原宿店を含め約70本が3日で完売した。追加発注したが、納品は早くても25日の見込みで、間い合わせも多いため予約販売の形を取るという。
 店の担当者は「20代から30代の男性が購入するケースが多い。南アでも人気が高くて品薄の上、国全体がW杯で盛り上がって仕事も休みがちのようで、生産が追いつかない」と話す。
 ブブゼラの音を出すのは簡単ではない。担当者は「私も練習したがうまく吹けなかった。音を出すには相当な肺活量が必要。買っていく人は記念にするようだ」。


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