イヤホン外して開けた世界
大学生　峠田（たわだ）彩香（愛知県豊橋市 22）

朝日新聞　2010年４月２日（朝刊）

一昨年９月、ジョギングを始めた。近くの公園を中心に６�`を40分で走るコースを楽しんでいるが、最近、ちょっとした変化があった。常にお供をしてくれていた音楽プレーヤーが故障して使えなくなったしまったのだ。

最近は憂うつだったが、イヤホンのないジョギングは重いのほかステキなものであった。それまで気づかなかった木々のざわめき、走っている人の表情、とくにお年寄りの生き生きした姿を知ることが出来た。車や自転車では絶対にわからない、夕暮れから夕闇に移ろいゆく街の香り、感じなかった夜桜の色やカフェでコーヒーを楽しむ人たちの表情なども分かったような気がする。

走ることで耳からの情報が増えただけでなく、目や鼻での新たな発見の多さに驚いている。何よりも車や小さな歩行者に配慮しながら安全に走れることがすばらしい。新しいプレーヤーは届いたが、音楽のないジョギングは当分続けようと思っている。だってこんな素晴らしい世界を知ることが出来たのだから。