注意放送で夜桜見物興ざめ
塾主宰 中島義道(東京都世田谷区 63)

朝日新聞 2010年4月5日


数年ぶりに千鳥ケ淵の夜桜見物に出かけた。満開の桜がライトアップされ息をのむ美しさであった。だが所々に警官が立ち「左側通行です。立ち止まらないで下さい」とマイク片手でがなり立てる。見事な桜もこの騒音漬けの中では興ざめであった。

みなゆっくり歩き、写真を撮り、静かに話し合っているだけだ。その中を警官の大音響がこだまする。せめて、人の流れをよく見て、混乱しそうになったら注意する方が効果的ではないか。ウィーンに長くいたが、大晦日やメーデーなど立錐の余地もないほどの群衆が集まっても、警官は周りで監視しているだけ。何の放送もない。それで何の間題も起こらない。

しかし、我が国では花火大会、秋のお祭り、駅伝大会でも、人の集まるところ注意放送だらけ。この行為に対して誰も苦情を言わないことにも驚かされる。一度放送なしでやってみたらいかがであろう。大混乱することはない。


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