本音のコラム「常識のライン」
倉田真由美(漫画家)

東京新聞 2009年3月26日(朝刊)


新幹線を頻繁に利用している私はたびたび小さなトラブルにあう。先日も子供がらみの悩ましい出来事があった。

「風邪をひいた子供が咳をしながら車両内をうろつく」とか、「子供が大声でわめきながら席の上を跳びはねる」といった、あからさまな迷惑行為ではない。だが、明らかに私には迷惑だった。

その家族は、両親と子供二人の四人連れだった。前列二席を動かしボックス席に変え、楽しそうに弁当など食べていた。「しりとりしよう!」。言い出したのは、小学校低学年に見える男の子。そして一家四人は、しりとりを始めた。「いか」「カメラ」「ラ、ラ、ラッコ!」ほほ笑ましくもむつまじい、家族の風景だ。

しかし、場所が問題である。逃げ場のない新幹線の中、子供たちの声がかなり大きいのだ。「お兄ちゃん、それさっき言った!」「言ってないよ!」

遊びに夢中になっている時の子供の声って、どうしてあんなにエネルギツシュなのだろう。キンキン声に眠ることもできず、怒ることもできないので、我慢して過ごすしかなかった。

常識のラインって個人差があるので難しいが、やはり両親に、「もう少し小さな声で」と諫めてほしかった。家族団欒ののどかな場なだけに、他人が口を出すのはかなり難しいのだから。 (漫画家)


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