「たきび」豊田駅発車音に かきねのかきねのまがりかど〜
あすから
ゆかりの詩人 巷聖歌 作詞
地元の熱意で実現

新聞東京2010年1月22日(夕刊)


かきねのかきねのまがりかど―。東京都日野市のJR豊田駅のホームで、童謡「たきび」が電車の発車を知らせるメロディーとして23日から流れる。作詞者の詩人巽聖歌((たつみ 聖歌)1905-73)=写真=が同市内に住んでいたことから、地元の商工関係者がJRに働き掛けて実現した。(立川支局・西川正志)

児童文学者でもあった巽は、童話作家の新美南吉を世に紹介した功績でも知られる。戦後、日野市に移り住み、68歳で亡くなるまでの25年間を豊田駅西側の同市旭が丘で過ごした。

1941年に「たきび」を作詞。世田谷区立用賀小校長などを務めた作曲家の故渡辺茂さんが曲を付けた。

旭が丘地区では巽をしのび、公園に「たきび」の詩碑を建てたり、毎年、「たきび祭」を開く。2006年からは、旭が丘商工連合会を中心に豊田駅の発車メロディーに「たきび」を採用してもらおうと運動。署名を集めるなどした結果、採用が決まった。

巽の長女中川やよひさん(68)=あきる野市=は「本当にありがたい」と喜ぶ。洒が大好きだった巽は、豊田駅近くの店で飲むことも多かったといい、「初対面でもすぐに仲良くなる性格。本当に地元が好きで、よく豊田駅からふらふらと千鳥足で帰ってきましたよ」と笑う。

「『たきび』で少しでも駅のお客さんの心が温まればうれしい。優しくておせっかい焼きだった父も喜ぶと思う」と話している。


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