ちびっ子鼓笛隊を疎む社会
会社員 伊藤亜生(横浜市港北区 42)
朝日新聞 2009年10月29日
「たかたかたんたんたん」。秋空にこだまする音色は鼓笛隊の練習風景……、とんでもない。幼稚園の庭で行進する園児たちが、太鼓の音をまねて出した「声」だった。
「聞けば、楽器を鳴らして練習すると近所からうるさいと苦情が入るとのこと。実際の楽器で練習できない先生や園児の気持ちはどうだろう。考えさせられるのは昨今の人の「許容量」のなさ。この幼稚園の鼓笛隊練習は季節の恒例行事で、近所には楽しみに園庭へ眺めに来る人さえ居る。
公園の子どもの声や学校などから聞こえる音がうるさくないとはむろん言わない。しかし、地域が「子どもを育てる」気持ちは、今までそれを許容してきたのではないか。
迷惑と感じる人の言い分も理解はしつつ、それでも猛烈な寂しさがこみ上げ、園児たちの声に大人を代表して私は「ゴメン」とつぶやいた。
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