ひとそれぞれの心にある歌
指圧師 武山正伸(59)

東京新聞 2008年12月26日(朝刊)


私の指圧院では、患者さんのリクエストでBGMをかけていますが、これがなかなか大変。なにしろ十歳の小学生から九十五歳のおばあちゃんまでですから。

例えば、八十八歳のおじいちゃんが喜んでくれるだろうと思って昭和元年のレコード(CDではありません)をかけたのですが、「オペラはないのかね」。九十歳のおばあちゃんのリクエストは、私が聞いたこともない新しい演歌ばかり。「奉公で小さいころから働かされたから、昔の歌はまったくわからないんだよ」

八十九歳のおじいちゃんは「軍歌はやめてくれ。つらくなるんだよ・・・」。 ちなみに、私が一番大切にしている歌は「高校三年生」です。二度とかえらない青春時代。送別会の時、皆で肩を組み、「がんばろうなあ」と言いながら涙を流して歌ったあの歌。 一人一人の人生に一人一人の歌がある。本当にそう思います。


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