朝の時報♪ 必要?不要?

東京新聞 2021年11月31日(朝刊)


朝昼夕の毎日3回時報が流れる

防災行政無線=岐阜県山県市で

防災無線点検の役割も

「生活に定着」×「睡眠の妨げ」

「私の地域では、毎朝六時に時報が鳴ります。夜遅くまで働き、朝ゆっくり寝たい人もいるはず。本当に必要なのでしょうか」。岐阜県山県市の六十代女性から今夏、本紙にこんな相談が寄せられた。昼と夕方も合わせ毎日三回、防災行政無線から音楽が流れるという。時報は防災とは関係ないように思えるが、取材を進めると、一概に良いとも悪いとも言えない現状が見えてきた。(●●●●●)

■時刻7時に変更

朝日に照らされた山県市美山地区(旧美山町)。今月中旬に訪れると、屋外スピーカーから「牧場の朝」のメロディーが約四十秒間、鳴り響いた。ただ、時刻は午前六時ではなく七時。市によると、市内の他地域に合わせて、今月から一時間遅らせたという。
美山地区で朝六時の時報が始まったのは二十年以上前。かつては田畑に出ている農家の人らに時刻を知らせる役目があったようだ。二〇〇三年に高富町、伊自良村と合併した後も同地区だけ六時に鳴っていたが、市民から「朝早すぎる』との声が上がっていたこともあり、防災無線のデジタル化を機に変更された。
ただ今月に入り、市には「なぜ変えたのか」という市民からの問い合わせが毎日数件あるという。担当者は「朝の時報自体は地域に根付いているため、取りやめることは考えていない。今後も市民の声に丁寧に応えていきたい」と話す。
県内の周辺自治体に朝の時報について聞くと、本巣市は午前七時、関市は同八時。北方町、岐南町は昼と夕方、岐阜市は夕方だけ鳴らしている。美濃市では、市民の意見を受け、午前七時の時報を今年五月中旬から休止。「今後の対応は検討中」という。
時報は何のため? 時刻を知らせるだけかと思いきや、もう一つ大事な役割がある。それは、防災無線が正常に作動しているか、日常的に動作確認や点検をすることだ。災害が発生した場合、自治体は災害の規模や現場の位置、正確な状況などの情報を地域住民にいち早く伝える必要がある。そのための防災無線をいつでも使える状態にしておくために、毎日の点検が欠かせないというわけだ。

■やめた自治体も

朝の時報を取りやめた自治体も。静岡県富士市は昨年十二月末で午前七時の時報を廃止し、昼と夕方だけにした。市によると、「生活の一部として無くては困る」という人がいる一方、子育て世帯や交代勤務の従事者らから育児や睡眠の妨げになり、ストレスを感じているという意見が年間十〜二十件寄せられていた。市民の世論調査でも「無くても困らない」「どちらかといえば無くても困らない」が四割を超えたため、「朝の時報は必要性が低い」と判断。廃止後、特に混乱はないという。
騒音問題総合研究所(青森県八戸市)の代表で、八戸工業大名誉教授の橋本典久さんによると、電車の車内放送や朝の時報などは「文化騒音」と呼ばれる。「明らかに迷惑な騒音なのか、聞いている人の不寛容による騒音なのか、見極める必要がある」と指摘る。
「サウンドスケープ(音の風景)についても考えてほしい」とも訴える。近年、盆踊りや除夜の鐘がうるさいとして取りやめるケースもあるといい、「風景に定着していれば、やめる必要はない」と強調。「やめるなら、社会的に必要がなくなったなど、はっきりとした理由が必要。地域によっては時報のチャイムが生活に定着していることもあるのでヽ一概に必要ないとは言えない」と話す。
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