東京新聞 2021年03月29日
東京五輸の聖火リレーで、ランナーを先導する企業の宣伝車の派手な演出に違和感が集まっている。新型コロナウイルス対策として、沿道では大声の会話の自粛が求められてける中、宣伝車の大音量だけが目立つ。スタート地の福島県では「驚いた」「しらける」などの声が相次いだ。27日は福島県でのルートの最終日だった。
リレー初日の25日、いわさ市の沿道で聖火ランナーを待ち受ける人々の前に、大型トラックを改造したような宣伝車が次々に近づいてきた。
大音量で流れるダンスミュージック。「盛り上げましょう」と車上から呼び掛けるDJ(ディスクジョッキー)。地上を伴走するスタッフが踊り、販売促進用のタオルなどを観客に配った。
いわき市の浦山義直さん(71)は「想像と違う。復興五輪という感じはない」。同市の鈴木三郎さん(84)は「1964年の東京五輪の聖火リレーも見たが、こんな宣伝がなくても盛り上がった」と渋い表情だった。
組織委によると、リレーの車列は約800メートル。ランナーは最後尾寄りで、沿道では「聖火はいつ来るの?」との声もあった。
宣伝車を走らせるのはリレーの最上位のスポンサー4社で、日本コカ・コーラ、トヨタ自動車、日本生命、NTTグループ。宣伝車は各社が用意し、7月23日の開会式までランナーと共に全国を巡る。
福島県では東日本大震災以降、人口減少が止まらない上、新型コロナの影響もあって、普段の街は静かだ。宣伝車を見て「気分が盛り上がった」と好意的に受け止める人もいたが、津波で夫を亡くした管野和子さん(68)=いわき市=は「聖火には感動したが、お祭り騒ぎはどう受け止めていいか分からない」と話していた。
日本コカ・コーラ社は取材に「音楽やDJによる演出は、ランナーの応援が目的。コロナ禍で安全安心にも注意している」とコメントした。