つながる電波 防災に活用
ポケベル再び脚光

2017年06月28日 東京新聞(夕刊)


「0840(おはよう)」「4649(よろしく)」―。1990年代、語呂合わせの数字メッセージが若者の間で大流行したポケットベル(ポケベル)。建物内や地下でもつながりやすい特性が見直され、東日本大震災後、防災分野でポケベル電波を使った情報提供システムを導入する自治体が増えている。専用端末に文字や音声で緊急情報が流れ、避難指示などを住民に伝えるのに効果的なためで、今後も注自を集めそうだ。

自治体が災害時の緊急情報を伝える手段は、現在、防災行政無線が主流。60メガヘルツの周波数帯の電波を使い、屋外スピーカーで放送するほか、各家庭に任意で設置する戸別受信機でも受信できる。しかし戸別受信機(縦20センチ、横25センチ程度)は1台3万〜5万円の価格が壁となり、普及が進んでいない。建物内で電波状態が悪いと作動しないこともあり、確実に緊急情報が伝わるか不安も指摘される。代替手段として携帯電話の一斉メールを送信する自治体もあるが、高齢者など携帯を持たない人には伝わらない。

そこでクローズアツプされたのが、建物内や地下での受信に強い280メガヘルツの周波数帯のポケベル電波だ。国内で唯一、サービスを展開している東京テレメッセージによると、この電波を受信できる据え置き型の専用端末は、防災行政無線の戸別受信機とほぼ同じサイズで、価格は2万円程度。どこに置いてもつながりやすく、自治体が発信した緊急情報を端末に文字で表示できるほか、音声に変換することもできる。

同社によると、5月末時点で12都県の21市区町がこのシステムを導入済みか、近く導入を予定。清野英俊社長によると「東日本大震災後に各地の自治体から問い合わせや受注が増えた」という。

神奈川県大和市では、米軍厚木基地の防音対策の影響で、防災行政無線の屋外スピーカーの音声が各家庭に届きにくく、2015年に導入した。担当者は「電波が建物内まで届きやすく、コストも安い。社会福祉施設や学校での整備を進めたい」と話している。

ポケットベル:

ポケットサイズの携帯用受信端末を使った無線呼び出しサービス。国内では1968年に当時の日本電信電話公社が東京23区で開始した。当初は電話をかけると端末が鳴動するだけだったが、後に文字情報も表示できるようになり、90年代には若者を中心に利用が拡大。メッセージを送り合う「ベル友」の言葉も生まれ社会現象となった。90年代半ば以降、携帯電話やPHSの普及で急速に市場が縮小。NTTドコモは2007年にサービスを終了した。


home