2016年8月2日朝日新聞(朝刊)
4年前のロンドン五輪で、私は日本人選手の活躍を楽しみに、バドミントンの試合を見に行った。英国人もたくさん来ていて、会場は和やかな雰囲気だった。ところが日本の選手が登場した途端、雰囲気が一変した。会場中の日本人の観客が、一斉に同じ応援を始めたのだ。
横一列に並んで応援用の道具を打ち鳴らす。日本の選手がサーブをする時、金切り声で「せーの!」と掛け声をかける。相手選手のミスには「ラッキー!」という声も上がった。スポーツ観戦の経験が少ない私はびっくりして、持参した日本の旗を思わず隠してしまった。
私の隣には英国人の老夫婦が座っていた。その後、日本選手の名前と「ジャパン」というアナウンスが流れると、2人は「オー、ノー」とつぶやき、退席してしまった。全員が同じ声援、同じ行動という日本式の応援スタイルが異様な雰囲気を作ったのだ。リオデジャネイロ五輪でも、こうした応援をするのだろうか。