2016年04月27日 朝日新聞(朝刊)
保育園不足の解消が公共性の高い喫緊の課題であるにしても、近隣住民の生活環境が変化することに対する十分な配慮も、等しくなされるべきだろう。我慢するのが当たり前というのは乱暴だ。
社会貢献に対する考え方も多様であっていい。年金が現役世代に支えられているからといって、高齢者が身を削って現役世代に貢献しなければならないわけではない。
子育てや社会貢献といった誰もが反論しにくいことを、立場の違いに配慮することなく押しつけるのは、いかがなものか。他者の権利を制約することが当然だとする雰囲気は判断を偏向させ、差別や排除につながりかねない。
それぞれの立場や事情の違いに想像力を働かせ、丁寧な対話を重ねて、互いの納得を引き出す面倒をいとわない社会であってほしい。