2016年04月14日 朝日新聞(朝刊)
リオデジャネイロ五輪の最終選考会となる柔道の全日本選抜体重別選手権を、テレビで観戦した。会場では、大声での応援が途切れなく続いていた。そのうるささは日本伝統の武道の一つである柔道に似つかわしくないと感じた。不快だった。
私は見逃したが、女子57キロ級の準決勝では、ロンドン五輪金メダリストの松本薫選手が寝技の攻防中、観客からの「待て」という声を審判の声と聞き違えて力を緩め、一本負けしたという。その記事を読んで驚いた。観客の応援や大声で、選手の集中力や判断までも狂わせてしまっていたのだ。
国技といわれる大相撲でも、近頃は力士名を書いた掲示物や、まとまっての拍手やコールが目立つ。「心技体」を重んじる競技では、観客にも観戦マナーがあってしかるべきだ。
西洋のスポーツでも、紳士の競技と言われるゴルフでは、パットの直前はギャラリーは沈黙し、息を殺して見守る。
一瞬が勝敗を分ける武道の試合では、観客は静かに観戦するべきだと思う。そういうマナーを守って欲しいと願うのは、私だけだろうか。