「保育所に防音壁」費用補助
厚労省、トラブル対策
東京新聞 2016年02月12日(朝刊)
政府が保育所や認定こども園などの防音壁設置費用を補助する事業を始めた。住宅が密集する都市部で園児の声を「騒音」と感じる周辺住民とトラブルになるケースがあるためで、施設整備を促進し、待機児童解消につなげる狙いだ。自治体の要望も踏まえ実現した事業だが、子どもが過ごす場所を塀で囲うkことには戸惑いの声も出ている。
厚生労働省は、腐食しにくいアルミニウム製などで高さ約3メートルの壁を園庭周囲に張り巡らし、数100万円の工事費がかかると想定。工場などの防音対策を参考にしたといい、2015年度補正予算に300力所分の必要額を計上、38年度も補助を継続する方針だ。厚労省の昨年の調査では、園児の声を騒音と思うことに共感する人は35%に上っており、「保育所建設をめぐり住民ともめるケースが増えており、国として解決策を示す必要がある」と事業化の理由を説明する。新設だけでなく、既存の施設が設置する場合にも政府が保育所や認定こども園などの防音壁設置費用を補助する事業を始めた。住宅が密集する都市部で園児の声を「騒音」と感じる周辺住民とトラブルになるケースがあるためで、施設整備を促進し、待機児童解消につなげる狙いだ。自治体の要望も踏まえ実現した事業だが、子どもが過ごす場所を塀で囲うことには戸惑いの声も出ている。
福岡県内の保育園に設置された高さ約3層の防音壁を補助する。待機児童数が全国最多の東京都世田谷区では、今年4、5月の開設を目指していた認可保育所約20力所のうち6ヵ所で計画を延期。園児の声などを懸念する住民との話し合いがこじれたケースもあるという。担当者は防音壁費用の補助を「対策を立てられる」と歓迎する。ただ「高い壁が数10年も残り、地域の不和の象徴になりはしないか」と懸念も示した。名古屋市の担当者も「補助制度は有効だが、子どもは開放的な気分で遊び回ってこそ、すくすくと育つ」と話し、厚労省は「壁設置を推進しているわけではない」と複雑だ。
保育施設の音環境に詳しい熊本大工学部の川井敬二准教授は、高さ3bの壁だと3階以上への防音効果はほとんどないと指摘。「効果は限定的でも、事業化されると当たり前のように壁が造られてしまう可能性がある。『塀の中の生活』がどういうものかを大人たちは想像するべきで、健全な発育に適した環境を社会が整備してあげることが重要だ」と話す。