「子どもの声うるさい」は不当か

会社員 ●●●●(東京都 43)

朝日新聞 2014年12月5日(朝刊)


保育園の近隣で子どもの声がうるさいという苦情があることに対し、この欄では「幼かったころを思い出して」「助け合える地域を」という意見ばかりが紹介されていて、少し残念に思った。

今と昔では時代の状況が大きく変わった。東京など都市部への人口集中は進み、住宅密集地に公園や保育園がある。かつては深夜勤務といえば、自衛隊員や警察官、医療従事者など限られた職種の人だけだったが、今は多業種で24時間化が進み、夜に働く人や土日勤務の人も多い。かくいう私も深夜勤務で、土日にも働く。

昼夜が逆の生活をする者にとって、子どもの声は安眠を脅かし、仕事の能率に響くこともある。通りで遊ぶ子どもの声が、資格試験の勉強の妨げになった経験もある。昔は近所の頑固おやじが騒ぐ子にげんこつを食らわすことが当たり前だったが、今は親ですら虐待で通報されかねない。

そんな時代に、子どもの声を「うるさい」と思うことの全てが不当だと思えない。それぞれに切実な理由があることも多いのだ。子どもの声を迷惑がる背景には、大都市問題や社会構造の変化があることを見逃してはならない。


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