会社顧問 冨田光一 73(東京都大田区)
東京新聞 2014年9月15日(朝)
友人からNHK交響楽団のチケツトをもらい、渋谷で素晴らしい音楽を聴いた。その余韻に浸ってJR原宿駅のホームまで来ると、例の無粋な電車の発車を告げる電子音楽が、がなり立てる。これまた無粋なアナウンスと共に。まったく興ざめで、いっぺんに楽しさが吹っ飛ぶ。
振り返って、いつごろから都内のJRや私鉄各線の駅でこのような電子音の発車メロディー採用になったのか。一般の乗降客に好評なのか、不評なのか。かつての発車ベルの音では何か不都合なのか。地方の駅でもやっているのか。行ったことはないので分からないのだが、外国では、パリでもロンドンでもニューヨークでも、鉄道の各駅でこんなことをやっているのだろうか。
日本の代表的な駅である東京駅の電子音楽は特にひどい。しかも、音のボリュームも大きすぎる。会話もろくにできないほどの大きさだ。もしも、外国からやってきた人たちの日本に対する第一印象が、この東京駅の電子音楽だとすると悲しすぎる。日本人は音
に対する感性が乏しいと言われかねない。
電子音楽に変えて乗客の事故が減ったというデータでもあるのか。何でもコンピューターで作ればいいというものではない。
おそらく、ある時期には、この電子音楽で発車を知らせるというスタイルが進歩的だと錯覚していたのであろう。
鉄道会社の役員さんたち、お願いだからもう一度このシステムを見直してください。決してかっこよくもないし、進歩的でもない。ただうるさいだけですから。