英国の劇場で見た親子のマナー
無職 松橋啓子(長野県 65)

朝日新聞 2014年8月10日(朝刊)


ミュージカル「レ・ミゼラブル」が大好きで、日本でも英国でも繰り返し観劇しました。

ロンドンで観劇したあるとき、両親と5、6歳くらいの姉弟が前の席に座りました。大人向けで長時間の演目だけに、「飽きてぐずりだすに違いない」と運の悪さを内心で嘆きました。

囚人たちが歌う、暗く、力強い場面で開幕。そのうち、はっと気づきました。幼い2人は舞台に集中しているのです。一度、弟が父親にささやきかけたとたん、父親が子どもの口を手で塞ぎ、首を振ってみせました。それだけで、2人ともラストまで静かでした。私は立ち上がって拍手をする際、両親に「ありがとう」と語りかけました。

一方、日本の劇場で小学生の女児と、その両親が隣に座ったときは、母親が子どもに物語りの筋をずっと説明しているのです。うるさかった。理解できる年齢になってから連れてきてほしいと思いました。

国は違っても、親がマナーをわきまえ、子どもにも小さいうちから教えるべきではないでしょうか。最低限、人に迷惑をかけないということだけでも。


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