近隣の凶行再び 川崎3人刺殺容疑
うるさい 毎朝怒声
衝撃と悲嘆、沈む住民

神奈川新聞 2009年5月31日


また日常生活をめぐるトラブルがきっかけだったのか― 。三十日、川崎市幸区のアパート大家柴田昭仁さん(73)と弟夫婦の男女計三人が刺殺された事件。逮捕された無職津田寿美年容疑者(57)を知る複数の付近住民は「洗濯機などの生活音をめぐるトラブルがあったようだ」と口をそろえる。市内では一年前にも生活上のトラブルが原因でアパート大家が住人に殺害される事件が起きており、住民から不安の声が上がっている。 (川崎総局、報道部)=本記1 面に

同容疑者と親しかったという近所の女性(59)は「『柴田さんの弟夫婦が朝から洗濯機を回すため、うるさくて眠れない』とこぼしていた」と話す。同容疑者は「今度会ったらぶっとばす」とも口にしていたという。

近所の男性(65)は「アパートからは毎朝のように『うるさい』という男の怒鳴り声が聞こえてきた」と明かす。

周辺住民によると、現場のアパート「幸栄荘」は築三十年以上の古い建物。二階建てで計九室あり、津田容疑者は五年前から家賃三万円の一階の部屋に居住、隣室など二部屋を嘉晃さん(71)と敏子さん(68)夫婦が使っていた。

幸署の調べに同容疑者は「音が我慢しきれなかった」と供述。一方で「酔った同容疑者が嘉晃さんの部屋のドアをたたいていた」との情報もあり、同署は生活音などをめぐり同容疑者が一方的に恨みを募らせた可能性があるとみて慎重に動機を調べている。

住民はショックを隠しきれない。近所の主婦は嘉晃さんについて「地元神社の夏祭りでみこしを担ぐなど熱心に活動していた。こんなことになるなんて」と絶句。敏子さんと前日に会話した主婦(80)は「敏子さんは今も仕事に出ているので、働きすぎないようにと声を掛けた。あれが最後になるなんて」と悲しんだ。同じ日に犬の散歩中の柴田さんと会った女性店員(86)は「いつも通り、こんにちはとあいさつしたのに…」と言葉を絞り出した。


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