騒音か音楽か 波立つ浜辺

東京新聞 2014年3月2日(朝刊)


湘南・海の家が「大音量クラブ化」


逗子は条例で規制/業者は猛反発


大音量の音楽で客が踊る「クラブ化」が神奈川県内の「海の家」の一部で進んでいる問題。海岸で殺傷事件まで起きた逗子市では、行政側が海水浴場での音楽禁止など規制強化に乗りだしたが、海の家の業者は「過剰な規制だ」と反発する。 (林啓太)

逗子市議会は2月26日、市海水浴場条例改正案を可決した。拡声器などを使った音楽や入れ墨の露出、海の家以外での飲酒やバーベキューを禁止するほか、海の家の営業時間を2時間繰り上げて午後6時半までとする。海水浴場を対象に規制する条例は全国でも珍しい。

その2日前の24日、海の家の業者らでつくる逗子海岸営業協同組合は「音楽の禁止は表現の自由の侵害に当たる。営業の自由を規制する合理的な理由もない」などとして条例改正の差し止めを求めて横浜地裁に提訴した。今後は改正条例の取り消しを求めていく。組合の原敦代表理事は「音楽が全く流れない海の家って寂しすぎませんか」と憤る。

市側は争う構えだ。市経済観光課の担当者は、規制強化の理由として「クラブ化」を挙げる。

逗子海水浴場の一部の海の家では約3年前からクラブイベントなどが開かれ、数10〜100人単位の若者が参加。昨年7月には逗子の海岸で殺傷事件が起きた。

昨夏、市に寄せられた騒音などの苦情や意見は、 一昨年の3倍を超える103件。昨夏の海水浴客は約41万7千人で、一昨年比約4割も減った。平井竜一市長は「海の家のクラブ化した営業やマナーを守れない客の増加が原因だ」と指摘。飲酒や入れ墨などの風紀の乱れも問題視する。 神奈川県」の湘南地域では、藤沢市の片瀬西浜海水浴場でも「クラブ化」が進行。片瀬西浜は海の家の組合が昨夏、「海の家では音楽を一切流さない」と自主規制に踏み切った。逗子には、片瀬西浜を締め出された若者らが押し寄せたとみられる。

逗子の海の家の対応は不十分だったのか。組合側も、バトロールや通路入り口への夜間灯取り付けなどの手は打ってきた。しかし、市側が再三要請した「海の家での音楽自粛」は徹底されなかった。原氏は「一部の海の家が音量で迷惑を掛けたのも確かだ。組合の指導が十分でない部分もあったかもしれない」と認める。 とはいえ、 一足飛びに音楽全般を禁じることに弊害はないのか。原氏は「音量規制の徹底で対応するべきだ。音楽の全面規制は浜の魅力を損なう。客がさらに減るはず」と話す。


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