たむろする若者 音で撃退
高周波大人に聞こえず
足立区深夜の公園で実験へ

読売新聞 2009年4月24日(夕刊)


高周波の不快音(モスキート音)を流して、深夜、公園に若者たちがたむろするのを防ぐ―― 。こんな実験を、5月から東京・足立区が始める。公園の遊具などの被害が全国的に相次ぐ中、同区内の公園でも、ベンチやトイレなどが壊され、その多くが夜間に集まる若者の仕業とみられるためだ。まず被害が多い公園1か所で、高周波音発生装置を設置し、効果があれば、ほかの公園にも導入する。装置の取扱代理店によると、公共施設での実験は全国初だという。

実験で使われるのは、英国製の装置。一定方向に17.6キロヘルツの高周波音を飛ばし、最長40メートル離れても不快に聞こえるのが特徴。日本音響研究所の鈴木松美所長(音響工学)によると、「高周波音は加齢により聞こえにくくなり、個人差もあるが、おおむね30歳以上になると聞こえなくなる。この程度では、人体への影響はないと思われる」。一方、10歳代の若者にはよく聞こえるとされている。

この商品を扱う都内の代理店によると、英米などでは9,000台以上が販売され、学校や公園の防犯対策として導入されている。ただ国内の販売実績は、個人商店などへの20〜30台のみという。

千葉県内の住宅街にあるコンビニでは昨年、試験的にこの装置を設置してみた。店長は「例外もあるが、スイッチを押すと2〜3分で入り口付近にたむろしていた少年らがいなくなる」と効果を話す。

足立区内の公園は約470か所。昨年度、トイレの便器や窓ガラスなどが破壊される被害は総額約300万円に上ったほか、落書きや騒音の苦情もある。大半は夜間に集まる中高生らしく、今回設置する区立北鹿浜公園(約2ヘクタル)でも約70円の被害が出ている。区の委託で警備会社がパトロールしているが、「常駐できずに効果が上がらない」(区公園管理課)という。

今回、装置(約20万円)は区に無料レンタルされる。区は地元町会の了解を得た上で5月に設置し、毎日午後11時〜午前5時頃に作動させ、来年3月まで実験する予定。

区の担当者は「近隣住民の迷惑にならない場所に設置する。若者がほかの公園へ流れたら、そこへの設置を検討する。そもそも、中高生が深夜に出歩かなければ、こんな実験をせずに済むのだが」と話している。

モスキート音: モスキートは英語で「蚊」(mosquito)の意味。英国で発明された若者のたむろ防止装置の製品名でもある。若者には「キンキンキン」と甲高い音が断続的に聞こえるという。開発者はユーモアあふれる科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の平和賞を2006年に受賞。製品は携帯電話の着信音にも利用され、教師には気づかれず教室で受信できるとして米英などで流行した。


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