「防災無線流れず被害拡大」
遺族ら、名取市に公開質問状
朝日新聞 2012年5月19日(夕刊)
東日本大震災の津波で1千人以上が犠牲になった宮城県名取市で、防災無線が稼働しなかったため被害が広がったとして、遺族らが29日、原因解明を求める公開質問状を佐々本一十郎市長に出した。
遺族らによると、市は昨年3月11日、大津波警報発令後の午後2時57分から計14回、市と市消防本部の担当者が防災無線のマイクに向かって避難を呼びかけた。だが、実際には市全域で放送されなかった。
市職員が機器の故障に気づいたのは約4時間後の午後7時ごろ。その間、他の方法での避難の呼びかけはなかった。遺族会の竹沢守雅副会長(44)は「妻の母と一緒にいた8カ月の息子がまだ行方不明。無線が鳴り、広報車が来ていれば逃げていたと思う」と話す。
市が今年4月23日に市議会に示した報告書では、地震の2分後に何らかの異常が生じ、無線の送受信装置がショートしてヒューズが飛んだことが原因と判断。「無線システムに欠陥があったとは結論づけられない」との見解を示した。
佐々本市長はこの日、防災無線の故障について「点検していた。行政の責任ではこれ以上できなかった」と話した。 (高津祐典)
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