走る巨大広告 都ブレーキ
過激デサイン、原色、点滅電飾
来月から審査制度
音声対象外、自粛呼び掛け
東京新聞 2011年9月19日(朝刊)
トラックの荷台に派手な広告を掲げた「広告宣伝車」による景観悪化を防ごうと、東京都は条例の施行規則を改正し、10月1日から自主審査制度を始める。全国に先駆けて、過激なデザインに歯止めをかける狙いだが、音声広告や都外の車両は規制の対象外。効果は未知数で、都は業者側の自粛を呼び掛けている。 (岡村淳司)
「大企業の商品やテレビ番組の宣伝などちゃんとした広告もあるが、脱法的に出没する風俗業界の広告もある。実態が把握できず、全くコントロールできていない」
「走る巨大広告」の問題点について、公益社団法人「東京屋外広告協会」の沖村修平事務局長が説明する。
渋谷や秋葉原など、若者の集まる街を中心に走る広告宣伝車。より印象づけるため色彩や電飾、デザインが過激化し、大音響を流す車も目立つ。人との距離が近く、消費者の反応に即効性があるのが利点という。
都によると、「公共の場にふさわしくない」などの苦情が寄せられ、2009年度から規制を検討。屋外広告物条例の規則を改正し、ラツピングバスなどに準じた規制を導入することにした。
今後は、全面広告を行うには運輸局に広告宣伝車として登録することが必要となる。また、協会のデザイン審査を通らなければ、車庫を置く区市町村から広告の許可が得られない。デザインは、原色・蛍光色の多用や点滅する電飾、性交を連想させるものは不可とする。
ただ、業界の自主規制との位置付けで、罰則はない。また条例が屋外広告を視覚的なものと定義しているため、音声広告は対象外。都外から来る車にも適用できない。都は「効果はやってみないと分からない」とし、近隣県に連携を呼び掛ける構えだ。
これに対し、業界側は困惑気味。広告宣伝車の先駆けとなったアドマックス(本社・文京区)の担当者は「条例だから従うしかない。 一社だけ『嫌だ』とは言えない」と言葉少な。「不況で広告が落ち込んでいる。なりふり構わず違法な車を走らせる業者もいたのではないか」と残念がる。
都と協会が20日に開く規制の説明会には、約80社が参加する予定だ。沖村事務局長は「規制は他都市にも波及するのではないか。せっかく現れた新ビジネスなので、社会に受け入れられる方向に育てたい」と話している。
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