沿岸部自治体
防災無線「壊滅」状態
大槌7割、宮古4割使えず

朝日新聞 2011年4月18日(朝刊)


東日本大震災の被災地の広い範囲で、津波被害のため防災行政無線が使えない状態が続いている。管理する市町村は復旧を急いでいるが、資材不足などで難航。今後、余震などで津波が発生する恐れがあるため、各自治体は情報伝達手段の確保を進めている。

岩手県によると、大槌町は7割、宮古市は4割弱が機能していない。大槌町では中心街などの57局中40局が破損し、同町の平野公平総務課長は「早く復旧したいが、めどが立たない」と説明する。

約70局が使えなくなった宮古市は、無線が聞こえなくなった地域の避難所に受信機を設置したが、避難所の外にいる人には音声が届かない状態。市は近く復旧作業を始めるが、地域の中で津波の到達しなかった場所を選んで設置するという。

岩手県内では釜石市と山田町で約3割、大船渡市でも1割強が被害を受けた。各自治体は使える無線を最大音量にするほか、無線を積んだ消防車両が拡声機で伝えるなどの工夫を実施。県総合防災室の小山雄士室長は「対応は急いでいるが、地震があれば、すぐに避難することを心がけてほしい」と呼びかける。

宮城県でも大きな被害が出た。女川町では無線の基地局となる役場が流された上、町内各所で拡声機のついた支柱も全て破壊され、復旧作業中だ。津波の情報が出た場合は、広報車が町内を巡回し、避難所には衛星電話で伝えるという。

福島県の沿岸部でも同様の状況。南相馬市は、市の広報車などを使って防災無線の情報を流し、16日からは臨時FM局を設置して情報を伝達している。市の担当者は「車両の拡声機ではすみずみまで音が届かず、『今の放送は何だったのか』と市に電話が相次いでいる」と話した。

【清藤天、本村文彦、川口裕之】


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