選挙戦術 様変わり
震災配慮「連呼自粛」「移動は電車」
東京新聞 2011年3月25日(朝刊)
名前の連呼は自粛、事務所内も節電―。二十四日に告示された東京都と神奈川県の知事選は、東日本大震災と原子力発電所の事故の影響で、選挙戦術が従来と様変わりしている。ガソリンや電力の不足、被災地の住民感情への配慮から、各陣営が「静かな省エネ型選挙」を目指しているためだ。
十一人が名乗りを上げた都知事選。渡辺美樹さん(五一)の陣営は「大声で名前を連呼するのはひんしゅくを買う」と指摘する。所有する街宣車二台のうち、使うのは一台にとどめ、街宣車を走らせながらの訴えを控える。
告示直後、街頭で大勢に支持を訴える「第一声」を取りやめたのが、石原慎太郎さん(七八)。事務所内で関係者が出席する「出陣式」だけにとどめた。防災服を着込み、現職として「非常時」をアピール。「公務に打ち込めば、結果として存在感を示すことにもなる」と陣営幹部は言う。
東国原英夫さん(五三)の陣営は、都内にある選挙事務所の電力を極力使わない方針を打ち出している。夜間はパソコンやテレビ、携帯電話の充電器のプラグを抜いてから帰宅している。
電車で数力所の演説会場を移動した小池晃さん(五〇)は、スーツの胸ポケットにICカード乗車券を忍ばせる。小池さんは「東京は公共交通網が発達している」とし、陣営も「都民感情に配慮しつつ、政策を訴えるのが選挙」と話す。
神奈川県知事選に出馬した各候補の陣営も、そろって選挙カーの使用を自粛する。
ジャーナリストの黒岩祐治さん(五六)は二十四日の第一声以外は街頭演説を予定せず、小規模な対話集会を積み重ねる作戦。露木順一さん(五五)の陣営は電車で移動する遊説隊を結成し、鉄道を乗り継いで主要駅前で街頭演説する。女性団体役員の鴨居洋子さん(六六)の陣営も「移動は極力電車を使う」。
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