大学図書館に「盗難」放送とは
会社員 宮地 一憲 (千葉県船橋市 37)

朝日新聞 2011年2月22日(朝刊)


仕事で母校の大学図書館に頻繁に通うようになった。国会図書館に次ぎ、大学では最大級の蔵書数を誇るだけあり貴重な書籍がそろっている。歴史資料の調査には最適だ。
学生時代の懐かしさの一方で、悲しいことが一つある。盗難の注意を喚起する館内放送が、しきりに流れることだ。「最近、盗難が多発しています。被害の多くは席を立った2、3分の間に起きています。貴重品は必ず身に付けてください」とのアナウンスを聞く度に、何とも言えない悲しさがこみあげる。
最高学府の図書館にふさわしくない放送は恥ずかしい。誰でも出入りできる公共施設ではない。利用者の大半は、大学の身内とも言える学生か教職員もしくは卒業生のはずだ。ほんの一部の不心得者の仕業かもしれないが、入試でどんな高い点数を取っても大学で学問をする資格はない。そんな放送で、希望に胸膨らませて入ってくる新しい人たちを失望させてはいけない。


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