とうきょうカフェ
電子音

東京新聞 2009年2月3日(朝刊)


「力強い支援を受けながらこういう数字に終わったのは、担いだみこしがいまひとつだったのではと反省しきり・・・」。先日都内であった首長選挙の投開票日。落選した候補者が、支援者を前に敗戦の弁を語っていた。「そんなことない、頑張ったよ」と声が飛び、しんみりした空気が漂う。そこに突然、「チャララ、ラーラー」と電子音が鳴り響いた。

語り続ける間も、なかなか鳴りやまない。気になって、演説に集中できない。すると、「うるさいですね」とポケットから携帯を取り出して切ったのは、当の侯補者だった。

その後も、支援する議員が「本当に悔しいです」と声を振り絞る横で、誰かの携帯から野球の応援歌のメロデーが流れる。ええと、これってどこの球団の歌だったつけ? 頭はそっちへ飛ぶ。厳粛なはずの場が、まるで電子音があふれるゲームセンターだ。

子どもじみた電子音で、大人の真剣な言葉がぶち壊し。ぜったいにおかしい。

(出田阿生)


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